一期一会 地球旅 185 うれしい話

長年の旅行業従事、特に添乗業務で経験してきたことやお客様との思い出、旅先で出会ったたくさんの人や各地で見分してきた興味深いことなどをずっと書いてきた。ここしばらくはもっぱら昨秋の宮城や今夏の広島での思い出などを綴ってきた。個人的には当初予想していたよりはるかに興味深く、心に深く残るものを多く見ることができたし、旅行先各所でご参加各位が多くのことに感動し、心打たれておられるであろう様子を見たような気がする。ところで、今回は旅行というよりは通勤や外出で世話になっているシルバーパスとSuicaカードにまつわる騒動の一日を書いてみたい。

 

第1弾

東京都のシルバーパスとは、満70歳以上の都民に対して積極的な社会参加を助長するために東京都からの補助金を受けて一般社団法人東京バス協会が発行しているパスのこと。一方、Suicaは鉄道、バス、買い物などに利用できるJR東日本のICカードであり、日本各地で同種のカードが様々な交通機関等で発行されており、今や全国的に普及しているであろう。ICカードは必要に応じて自分なりの金額を払い込んで使っているが、シルバーパスは年に1回発行されている。 両方のカードは一緒のパスケースに入れて普段持ち歩いているが帰宅後は玄関先の引出しに保管することと決めて、無くさないようにといつも気を付けている(つもりである。) ところが2年前に一度紛失したことがある。ICカードは残額がまだ残っていたがそれはあきらめるとしても、パスは発行後数日過ぎたところであり有効期間はほとんど1年間残っている。そこで急ぎ、再発行の申請をした。再発行されるまでの間は交通機関を利用しなければもちろん支出は伴わないが、動けば動くだけその分は当然負担しなければならない。つまり、自分なりのペナルティということになる。幸い、2週間後に再発行してもらい、それからは前よりなお一層慎重に使用し保管することに気を付けてきた。この話には後日譚がある。数か月後、クルマの整備をしてもらった時、シートの間に落ちていたとして整備士が見つけてくれ、嬉しいハプニングであった。

 

第2弾

今朝(12月7日)、靴を履き、玄関にある物入れの引き出しを開けたところ、あるはずのパスケースが見当たらない! 鞄の中や一昨日着たスーツのポケット、散歩などに出かける時の小物入れのバッグなど心当たりのところを片っ端から調べて見たが見つからなかった。思い直してみると、最後に使用したのは、2日前の通勤ではなく昨日早朝散歩に出て成城学園駅まで歩き、そこからバスで帰ってきたことを思い出した。その時に使ったことは間違いない。そこでバスから降りて帰宅してからのことを一通り思い

 

 

直してみたがどうしても見つからなかった。この日の出勤は、定時業務ではなく、事務処理等の自主的な用向きであったので時間的な制約はなかった。とはいえ、いつまでも探し回っていることもできない。30分くらい探し回ったが、見つからず。止む無く、もう一枚のICカードを使って出かけた。新宿でJR山手線に乗り換え、たまたま空いていた座席に座ろうとしたところ足元に自分のものとは違う色のむき出しのICカードらしきものが落ちているのに気付いた。手に取ってみると、TiPiPaと印字されており自分は初めて目にするカードであった。裏には、ローマ字で、 xxxxINOUEとあり、どうやら持ち主の名前らしい。カード発行会社の電話番号が書いてあるのでそこに聞けば何かわかるかもしれないとは思ったが、出勤途次とあってその時間もない。自分の下車駅である高田馬場までは2駅、4分で着く。下車して、そのまま改札口へ向かい、精算窓口に聞いてみるとこちらで処理しておきます、とのことであったので届けて終わり。届け出た自分の名前はもちろん、どこで拾得したかなどについても聞かれなかった。忙しい駅務のなかではそれが今流(いまりゅう)かも? そして、

 

 

 

もし、自分も前日バスの車内でカードを落としたとすれば、誰かが拾って遺失物として届けてくれてはいないだろうか、と虫のいいことを考えた。自分が届けたカードが持ち主と思しきxxxxINOUE氏に戻されることと信じ、一方ではそのご利益で自分のカードも見つからないものか、と願いつつ勤務先へ向かった。

 

第3弾、

勤務を終え、午後の予定もあるので急いで帰宅。もう一度入念に心当たりをくまなく探してみたがやはり見つからなかった。シルバーパスは今では再発行申請後、通常1週間後に入手できることになっているそうであるが、念のため再発行の申請しておく必要がある。そこで、成城学園前駅にある小

 

田急バス案内所に出向いた。前日、散歩から帰るときに乗ったバスはこの駅前から渋谷駅間を運行している。但し、この区間では小田急と東急の2社が交互に運行しており、前日乗ったのはどちらであったか定かではない。もしかすると後者であったかもしれないが、とにかく前日からの経緯を説明し、遺失物としての届は出ていないかについて質問してみた。すると、遺失物の窓口は小田急では狛江、東急は弦巻各営業所とのこと。そこで先ずは

小田急に電話したところ、応対ぶりがなんとなく心地よかった。黒色のパスケースに記名されたシルバーパスとSuicaカードが入っており、窓口で保管されていることが分かった。つまり、前日バスに乗って座席に座ってパスを小物入れのバッグにしまったはずであるが実際には入れておらず、座席の前かどこかに落としていたのであろう。電話の向こうの遺失物係氏の話を聞いて、一気に朝からの鬱陶しい気持ちが軽くなり、多分、スマホを持ちながら頭を下げていたような気がする。早速、営業所へ出向き、窓口で無事返してもらうことができた。当然のことながら、届けて下さった方の名前を教えていただけないかとうかがったところ、乗客からの届け出ではなく、運転業務を終えた乗務員氏(運転手)が車内点検中に発見して届けたと思うとのことであった。従って、「業務の一環としては当然のことであり、気にする必要はありません」とのことであった。窓口氏の対応は淡々としたものであったが、乗務員氏の誠実な仕事振りと小田

 

急バスの姿勢に対して感謝の気持ちでいっぱいであった。帰り道、思ったことは、その日の朝、電車の中で拾ったICカードを届けたことが回り回って報われたに違いない!? 何ともうれしい一日であった。それにしても、次第に物忘れが多くなってきていることを痛感し、嬉しくもあるが何やらほろ苦い気分でもあった。

 

 

(資料)

 

小田急バス 渋24系統 成城学園駅バス停にて(筆者撮影)

無事、手元に戻ったシルバーパス(裏側にICカード在中)

 

(2017/12/7)

小 野  鎭